ゆにわのうたひ

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生徒の訃報

まだ心の中の整理がついていませんご、自分なりに越えるために書きます。


水曜日の朝、数年前から関わりのある松江の青少年支援センターから電話があった。

ドラムスクールで4年以上通い続けてくれていた子の訃報だった。

彼にはじめて会った頃は、家庭環境の問題が元で引きこもりになっていた。会話があまりできないと言われていたが、いわゆる場面緘黙であったと思う。無表情で、何を聞いても反応が薄く、何度か聞き直して、頷き(それもかなり曖昧)を頼りに会話をした。

詳しい事情は聞かなかったが、色々な意味で自信を失っているけれど、以前、太鼓を叩いた時に唯一褒められた事があり、これが自信回復のきっかけになれば…という話を親御さんから聞いていた。

1度目のレッスン、全身が硬直していたけれど、簡単な8ビートはなんとか叩けた。続けてみたいか?と尋ねたが返事は微妙だった、が、それでも続けて来るようになったので、それが意思表示だと思った。それから4年以上、病気以外ではほとんど休講なしで通い続けてくれた。

本人は話さないが、いつも送迎をしていたおばあちゃんから、楽しくて仕方ないんだと話していると聞いた。ドラムに通いはじめてひと月もしないうちに、また学校に行き始めたとも。

それでも、1年くらい経った頃から、スクールでも少しづつ笑うようになってきた、だんだんと一言二言返すようにもなってきた。

大分上達してきたので、親御さんに勧めて、電子ドラムを買ってもらった。それからはメキメキと腕を上げてきて、そのうち苦手な譜面も読めるようになってきた。自分の好きなバンドの曲をちゃんと叩ききれるようにもなり、地域の支援活動の集いの中でもベテランのバンドメンバーに囲まれつつ立派にドラムを披露し、不登校から立ち直ったケースとして、その様子は地元の新聞やニュースにも取り上げられた。

それが自信に繋がったようで、それからも徐々に表情も柔らかくなり、話しかけると、一言二言とはいえ笑いながら受け答えしたり、時には冗談さえ言うようになった。

高校を卒業してから、少し足踏みはしたもの、先日ようやくアルバイトが決まった。これで大手を振って自分の欲しい物が買えるな!というと、嬉しそうに笑ってはい!と答えていた。

周りから見ても、彼が元気になり、自信を回復しつつあるのが目に見えていた。ドラムに座ってもサマになってきたし、寡黙ながらも熱い想いを演奏でぶつけてきた。それに少々高度な事をやっても直ぐにこなせるようになっていた。

そんな矢先に、突然、彼は自ら命を絶った。



通夜に訪れた時、ご家族、特に毎回レッスンの送迎をされていた彼のおばあちゃんから話を聞いた。

電子ドラムを買って貰ってからは、毎日必ず風呂の前に練習していたらしい、彼の部屋には折れたスティックが何本もあった。時には寝床にまでパットを持ち込んで練習していたらしい。
外で少し凹むような事があっても、僕にはドラムがある、と言って自分を取り戻していた。

教室では一切そんな話もしなかったが、僕の事はとても慕ってくれていたようだった。僕の演奏している動画を探して家族に見せたりして、うちに行ってみたいとも話していたらしい。

机の上には通販で買ってまだ届いてないドラム関連のレシートがあったらしい、書き置きもないし、思い詰めてる様子も全く無かった、家族も皆、ここ数年どんどん元気になってきて、このところ調子も良く、ひと安心していたところだったと。。

或いは、本当にただ足を滑らせて落ちてしまったのかもしれない。そう思いたい気持ちもある。

彼は夜に一人家を出て、わざわざ電車に乗って出雲まで来て命を絶った。
バンド関係の友達や、僕も住んでるということで、出雲に住みたいと以前言っていたと聞いたのだが、そんな友達の近くに居たかったのかな?


今朝、ふと思った。
あれは彼なりの離脱であり飛翔ではなかったかと。
劣等感を抱えて暮らし続けた地元ではなく、好きな事を共有している仲間たちの暮らす新しい土地へ、彼なりに殻を破って旅立った証なのではないかと…いや、これは現実を受け止めたくない僕の勝手な思い込みかもしれない。

そんな事より、やはり生き続けていて欲しかった。ここまで頑張ったのに。。車の免許でも取れば、うちに呼んで色々聴かせてやりたかったし、酒も飲ませてみたかった。

自分の無力さを思う。
それでも、短い人生だったけど、ドラムに打ち込めて楽しみができて良かったと、あれが無かったらどんなにつまらない人生だったろうと、気丈におばあちゃんが言って下さった言葉が少しの救いではある。

それにしても18歳、若過ぎるよ。
これからもっと楽しい事、いっぱいできたのにな、残念だよ。

棺に入れる寄せ書きには、

次、逢うまでにいっぱい練習しとけよ!とだけ書いた。


天国でも思い切り叩いて欲しい。



彼が大好きだったSIDの「秋風」
自分で選んできて、唯一叩いている映像が残った想い出の一曲。
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by YUNIWAUTA | 2015-06-12 11:37 | 雑記帳

ゆにわ主宰          歌島のひとりごと 


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