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ゆにわのうたひ

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「風天」と名乗る男

今日、いつものように午前中のお客さんを終えて玄関まで送りに行ったとき、一人の青年が玄関先に立っていた。

「こんにちは」

少し浅黒い顔、背中にはバックパック、手には何か本のようなもの。
ありゃー....これってまた某新興宗教系の募金活動隊か?と一瞬思うが、よく見ると手にしているのはスケッチブック。

「僕、旅の者なんですけど、ここって何なんですか?」

どうやら、「ゆにわ」という看板に引かれてやってきたらしい。
時々、旅の方が、うちの玄関を写真に撮ったりしに来ることがある。
社家町のたたずまいを多少臭わせる古民家だし「ゆにわ」とは何ぞや?と思っての事だろう。
でも、玄関まで入って来る人は珍しい。

ちょうどお昼時だったので、酔狂でお家に上がってもらった。

聞くと、彼は和歌山の出身。
大学卒業から就職という流れにはどうしても気が進まず、縁あって導かれたオーストラリアで自然農に出会い、以降各地の農家を手伝いながら放浪の旅を続けているとか。
そして、彼の手にしたスケッチブックには、彼の触れてきた人や物の絵がたくさん書かれていた。

ちょうど彼も弁当を食べる場所を探していたという事で、一緒に昼食を食べつつしばし歓談ながら、彼の絵をじっくりと見させてもらった。
彼の書く絵は特に訓練された絵ではないけれど、何だか底抜けに明るくてひょうひょうとしている。
「悩みなんてなーい!」という感じの楽観的な絵なのだ。
絵には「風天(ふうてん)」という落款が押されている。

「絵はあくまで好きで書いているだけで、僕の本分は百姓ですから....」と彼は言う。

あれやこれやと話しているうちにお互い妙な親近感が湧いて来た。
今日始めて会ったけど、何かどっかで会った事あるみたいやね?なんて話していると、いつしか次のお客さんの時間を過ぎていた。
が、何故かまだ来られない。

お客さんに確認の電話をしようかどうしようか迷っていると、
「せっかくですから、出会いの記念に似顔絵を書かせて下さい。」と彼が言う。
いや、いつお客さんが来るか分からないしな....と思いながら、でも、これも意味あっての事に違いないし、人に似顔絵を描いてもらうなんて始めての事だし....
そう思っていると何だか妙に嬉しくなって、早速書いてもらう事にした。
そして、できたのがこの絵。
「風天」と名乗る男_c0037400_2249418.jpg
僕に似てるだろうか?......というより、これは彼に似ている。
絵描きの人って、人の顔を書いてもどこか書いた人に似るって言うけど、本当だな〜。

そして気付くともう予約時間を45分も過ぎている。
そろそろ彼も旅路に戻るし、僕もお客さんに確認の連絡をしないと....
という訳で、彼に歩いて行ける出雲観光スポットを教えて握手の別れ。

もしかしたら、またどこかで出会うかもしれない。
次に会う時には、二人ともどんな風になっているんだろう......
そんな事を考えながら彼を玄関で見送っていると、入れ違いに遅れていた午後のお客さんがやってきた。

「いや〜、お客さんが帰らなくて、すっかり遅くなってしまいました....」と、頭を掻きながら...

いえいえ、こっちとしてはちょうどバッチリなタイミングでしたよ。
彼と目配せしながらピース!!
と、しばしのマレビトの来訪に、心温まった午後でした。

「風天」さんは、この後、鳥取を通って9号線をヒッチしながら京都に向かうそうな。
by yuniwauta | 2005-10-21 23:11 | 雑記帳

ゆにわ主宰          歌島のひとりごと 


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